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【フェムテックプレス編集部/FProoms-おとなの学び場-】
子どもの「性教育」、誰かに任せますか?

フェムテックプレス編集部

2023.07.21 14:30

フェムテックプレス編集部「FProoms-おとなの学び場-」は、フェムテック・フェムケアにまつわるジャンル(ウェルネス/月経/不妊・妊よう/妊娠・産後ケア/セクシャルウェルネス/更年期)に関するアイテムやサービスを、実際に編集部が体験して紹介するコーナーです。

子どもたちにとって、待ちに待った夏休み。学校以外で様々な体験ができる機会ですが、一方、学校や勉強から解放されて、子どもたちの気もゆるみがちに。
とくにSNS、メール、インターネット掲示板等のコミュニティサイトなど、性被害にかかわる危険が高まると言われています。お子さんを持つ親御さんとしては、心配ごとが増える時期でもあり、お子さんの行動や生活の変化を注視する必要です。
この夏、大切なお子さんの心と体を守るために、知っておきたいこととは?

そこで今回は、10代女性の心と体の変化について学べると話題の本『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』を取り上げ、親が知っておくべき「性」に関する知識や情報をアップデートしたいと思います。

『はたらく細胞LADY 10代女性が知っておきたい「性」の新知識』
著者:及川夕子
出版社:講談社
https://news.kodansha.co.jp/9521

成長による体の変化を迎える時期に、様々な悩みを抱え始める10代女性やその親御さんに向けて、包括的性教育(ユネスコ提唱)に沿って、正しい性の「新知識」を紹介しています。

著者の及川夕子さんがゲストスピーカーとして参加されていた、「フェムテック」関連のウェビナーを視聴していた時に、この本のお話をしていました。
「フェムテックプレス」で紹介したい!そう思った決め手は、『全国学校図書館協議会の選定図書にも選ばれました』というワードでした。
「#はたらく細胞LADY」「#10代女性が知っておきたい」「#性の新知識」(タイトルを勝手にハッシュタグ化)が、学校の本棚に並ぶことを想像し、生徒が手に取り、自分たちなりにどう理解するのか、興味がわきました。
フェムテックプレス編集部でも早速チェック。2児の父親(息子・娘)として日々奮闘し、娘に誇れる父親を目指している男性スタッフ森下と一緒に、本を読んで感じたことを話し合ってみました。

【INDEX】

● そもそも「性教育」を受けた記憶、ありますか。
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● 読後の感想は「ここまで教えるの?!」驚きと納得のはざまで。
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● 発言や行動によって、誰もが「傷つく側」にも「傷つける側」にもなる。
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●「知らなかった」と手遅れにならないためには。
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そもそも「性教育」を受けた記憶、ありますか。

菅野:小学校5年生くらいに女子だけ視聴覚室に集められて、スライドを見た後に、生理ナプキンのつけ方などを学びました。初潮を迎える時期だからかもしれませんが、「生理」に特化した話だった記憶があります。
中学時代には、保健体育の授業で体の構造とか妊娠について、男女一緒に学びました。その時期にはすでに生理がきていたり、体形も女性らしく変化し始めていたので、本当に気まずさしかなかったですね。
「性教育=恥ずかしい」という意識が強く、「自分の体のことを学んでいる」という意識はほぼなかったです。

森下:学校できちんと教わった記憶がないですね。僕の場合は、なぜか知識を持っている同級生や先輩が教えてくれる時代でした。
生理については触れてはいけないこと、アンタッチャブルな領域という感じがしていたし、女子同士が話をしているのも聞いたことなかったですね。ただ、クラスの女子だけが集められた時には、「生理の話だな」とは思いましたが。
性の知識についても、間違った情報はあったかと思いますが、その当時は見聞きした情報がすべてだったので、「自分の体を知ることが大切」という認識もなかったです。

菅野:確かに、女子同士でも生理の話はしなかったです、まさに秘め事。一方、家では母も姉もいたので、父親にも話しやすいオープンな環境でしたね。ただ、その他の性の情報は、恥ずかしい、隠す環境で育ってきました。もしも、親から性についての話をされたら「え、何でそんなことを言うの?」と身構えてしまったはずだし、想像するだけでも複雑な気分です。
そもそも性教育は、学校に委ねるだけでいいのか、親も教えるべきなのか。どういうタイミングで、どのように切り出せば、自然と話をすることができるのか。この本の立ち位置は「自習対策」ということなので、やはり「自分で学ぶ」ということなのか・・・。

森下:僕には娘がいるので、実際に初潮を迎えた時、娘はどんな心境なのか、親としてどうしてあげるのが娘にとっていいのか。女性の体の仕組みやホルモンバランスなどについては理解はしていますが、心境や接し方については正直わからないですね。たとえば、赤飯を炊くべきなのか否か。

菅野:お祝いムード満点のお赤飯の風習、まだ残っているのかしら・・・。

読後の感想は「ここまで教えるの?!」驚きと納得のはざまで。

菅野:「性の新知識」と書かれている通り、「生理」のパートだけでも15項目に分かれていて、アップデートと記されている項目にはPMS(月経前症候群)、吸水サニタリーショーツや月経カップが紹介されていたり、ホルモン周期や婦人科、低用量ピルについての説明もあったり。どのテーマも日常的にモヤモヤと悩みそうな切り口で、その回答にあたる内容はかなり専門的。大人の私でもしっかり学べます。
印象的だったのは、「あなたの体はあなたのもの」「自分を大切にすることで相手も幸せにできる」という、個人の尊厳や人権などに結び付けて書かれていたことでした。

森下:この本では「性教育=生理」だけではなく、自分の容姿や外見差別、恋愛の悩み、ジェンダー、セクシュアリティ、ネットリテラシー、性暴力、デートDV、恋人との付き合い方など、「これって性教育?」と思うようなテーマまで取り上げていますよね。
「性」を取り巻く事柄すべてを学ぶことが、多様性の時代に必要な「性の教育」なんだと受け取りました。

菅野:本の『はじめに』にも書かれていましたが、ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に基づき、生殖に関する知識だけではなく、人間関係や人権、ジェンダー、多様性など「包括的性教育」を学ぶ必要があると。
私たち世代が学んだ30年前の教育内容は、もはや通用しなくて当然。海外と比べて、性の後進国日本もようやくここまで来たという感じなのかもしれません。

森下:娘がこれから成長していくなかで起こる体や心の変化に、戸惑うことが多々あるんじゃないかと。誰にでも起きることだから「不安にはさせたくない」ですが、はじめにきちんと伝えたほうがいいのか、都度伝えていくべきか、正しく伝えられるのか。今まで学んでこなかったから自分も不安です。

発言や行動によって、誰もが「傷つく側」にも「傷つける側」にもなる。

菅野:『はたらく細胞LADY』がベースになっているため、登場するキャラクターたちがどんな働きを見せてくれるのかも楽しみでしたし、彼らのおかげで教えること、伝えることをためらってしまいそうなテーマでも少しラクな気持ちで読むことができました。
娘さんを持つ森下さんは心配なことが多そうですね・・・今まで性教育について学んでこなかったから不安と言っていましたが、父親という立場でこの本を娘さんに渡すとしたらどうしますか。

森下:理論的に書かれていて、僕自身は読んでみてわりとスーッと理解できました。やはり自分がまず理解しないとダメな気がして。話をする年齢にもよりますが、娘にそのまま渡したところで、どのくらい理解できるのか。妻と話しをしてみて、かみ砕いて教えてあげるような気がします。
「10代女性が知っておきたい」というテーマで書かれていることが、たとえば小学校高学年や中学生だとしたら、正直、親には相談しづらい内容ばかりじゃないですか。

菅野:絶対、親には相談できない(笑)。だからこそ、ターゲットとなっている子を持つ親御さんにぜひ読んでもらいたい。成長する子どもを取り巻く環境には、大人には想像できない複雑に絡み合った悩みがいっぱいあることを知ることができる。そして、その悩みは自分と誰かを比べたり、自分と誰かとの関係性によって生まれてくるものがほとんど。
発言や行動によって、誰もが「傷つく側」にも「傷つける側」にもなる。ターゲットは10代女性ですが、自分と大切な誰かを守るためには、男女年齢問わず知っておくべき情報が書かれていますね。こういった性の情報を息子さんにはどう伝えたいですか。

森下:僕らの時代には、この本のように性や多様性について、わかりやすくて読みやすい内容にまとめられたものはなかったです。今の子どもたちは情報過多の世界で生きていて、インターネットやSNSを通じて不特定多数の人とつながっている。正しい情報もあれば間違った情報を流す人、面白おかしくイジる人もいたりする。僕は息子とは面と向かって話し合える、一緒になって考えてあげられる関係性でありたいです。

「知らなかった」と手遅れにならないためには。

森下:現代の「性」は、自分たちが知っている「性」とは違う。人との出会い、SNSと接触した時点で「性」が始まっていて、多様性によってそのカテゴリが大きくなっている。それぞれの知識はあったとしても、それがつながっているとは思っていないから、今の子どもたちにはつなげて教えていかないと伝わらない。この本を読まないで教えるのと、読んで教えるのではだいぶ違うと思います。

菅野:「自分の体は自分で守る」、「自分の意思を大切にする」、「ありのままの自分でいる」。今では当たり前のように言われていることですが、人間としての「強さ」が必要です。その強さを“子ども”のうちから!?…と思ってしまった私の考えこそ、アップデート&チューニングが必要でした。インターネットやSNSと密接にかかわっている子どもの世界。見守り、寄り添う親だけではなく、子どもも自分の身を守るために、性に関する正しい知識を持つことが大切だと、この本から教わりました。きっと私と同じようにアップデートが必要な親御さんや大人はたくさんいると思います。学校だけではなく、会社の選定図書にもおすすめします。

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