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【フェムテックプレス編集部 取材レポート】
2023年2月開催「健康博覧会-特設-ジェンダード・イノベーションEXPO」

フェムテックプレス編集部

2023.02.17 16:00

ヘルスケア業界の新スタンダード「ジェンダード・イノベーション」を
見て、聞いて、触れて、知る3日間。

去る2月8日(水)~10日(金)の3日間、東京ビッグサイトで「健康博覧会-特設-ジェンダード・イノベーションEXPO」が開催されました。健康に特化した国内最大規模のビジネストレードショー「健康博覧会」と、女性ヘルスケア市場専門のシンクタンクカンパニー「ウーマンズ」の2社が取り組んだBtoBの展示会。女性・男性特有の健康問題やニーズなど、男女の性差に着目、考慮した製品やサービスなどが集結しました。
来場者数集計は、昨年より148%増の21,545人(健康博覧会事務局インフォーマ マーケッツ ジャパン株式会社発表)でした。
注目度の高さがうかがえる同展示会で、フェムテックプレス編集部が注目した製品・サービスをいくつかご紹介したいと思います。

ジェンダード・イノベーションEXPO

目次
1 「ジェンダード・イノベーション」とは?
2 フェムテックプレス編集部が注目した製品・サービス
3 フェムテックプレス編集部がビジネスカンファレンスで注目したテーマ

1 「ジェンダード・イノベーション」とは?

「ジェンダード・イノベーション」とは、科学や技術、政策など幅広い分野において、生物学的(セックス)・社会的(ジェンダー)の性差分析を取り込み、新たな視点を見出し、より質の高い研究や技術革新(イノベーション)の創出を目指す考え方とされています。

なぜこれまで様々な研究や開発は、男性を基準として進められてきたのでしょうか。そもそも研究者や技術者が男性中心だったために、性差が見過ごされ、無意識に男性を基準として研究開発が行われてきたといわれています。

欧米ではすでに広まりをみせていて、日本では昨年4月にジェンダード・イノベーション研究所が設立され、政府が発表した「女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針 2022)」の中でジェンダード・イノベーションに言及したことでも、ヘルスケア業界で性差分析の関心が高まるきっかけとなりました。

そのジャンルは、医療・ヘルスケア、工業・農業製品、AI、家具家電、公共施設など多岐にわたり、私たちの身近な暮らしの中にも多く存在しています。
そのなかで、とくに医療やヘルスケアの分野においては、性差分析を取り込むことにより、健康問題・健康悩み・健康ニーズをより正確に捉えた製品・サービス開発につなげられることが期待されています。

2 フェムテックプレス編集部が注目した製品・サービス

多様な視点で男女の性差や、男女特有の健康課題に着目した製品やソリューションを提案する企業が60社以上、女性誌や業界紙をはじめとしたメディアが合計38社、ビジネスカンファレンスが17講演と、3日間にわたり多くの来場者を集めていました。

出展者ブースのカテゴリは大きく分けて2つ。生殖機能・排尿機能・排尿器官・腸内細菌叢・化粧療法・睡眠・健康行動・がんサバイバーのニーズ・外見ケアのニーズ・災害時のニーズ、トイレ空間の性差をテーマに出展したブース。女性・男性の特有の健康課題をテーマに出展したブース。男女、体格や身体の構造と機能の違い、加齢に伴う変化など、性差を考慮した製品やソリューションが展示されていました。

■ ふたり妊活のスタートは、ふたりでおうち検査から ■

「ふたり妊活」をいち早く提案し、2018年から毎年『妊活白書』を発表している「ロート製薬」。2020年のコロナ禍での調査では、家庭内で過ごす時間や、ライフプランを考える人が増加。男性のふたり妊活への意識が高まるものの、積極的なセルフ妊活の割合は低いという実態も。
女性だけでなく、男性が妊活に向き合うきっかけとなるような商品の開発を目指し、男性の妊活セルフケアとして「運動精子濃度テストキット」を発売。男性の精子濃度×運動量で元気な精子=運動能力のある精子がどのくらいいるのかを算出することができます。スマートフォンで手軽に、高精度に測定できるのは、セルフ妊活のファーストステップとしては取り入れやすいように思いました。

■ 認知症やうつ病も?!腸内細菌叢が教えてくれること ■

日本最大級の腸内細菌叢解析データベース(約23,000人)を用いて、腸内細菌叢と疾病リスクの関連を研究・開発している「シンバイオシス・ソリューションズ」。
様々な疾病との関連が報告されている腸内細菌叢にも、男女差があることを明らかにした同社の検査キットでは、大腸がんや脳梗塞、女性特有の疾病(不妊症・乳がん・月経異常)、男性特有の疾病(前立腺がん)を含め、約30の疾病リスクを分析してくれます。
分析結果には病気のリスクだけではなく、腸内細菌叢のタイプや腸内細菌のバランス、多様性、疾病への対策としてリスクを下げるための食品に関する情報も提案してくれます。自己管理だけでは難しい、予防や未病ケアにも役立ちそうです。

■ ひざ、手首、指の関節までも痛い「更年期症状」にピタッと!■

『女性の「ひざの悩み」は男性の4倍。大切なのはライフステージに合わせた女性のための“からだケア”』をテーマに、ブースを展開していたのが「タナック」。医療用シミュレータ、航空宇宙、ロボット工学などの幅広い知見から、膝サポーターや骨盤ベルトを開発している企業です。
なかでも、膝まわりにシリコーンが張り巡らされている「人工筋肉膝サポーター」は、はくだけで膝まわりの筋肉や腱を包みこんで、膝のぐらつきをサポートしてくれます。
もうひとつおすすめしたいのが「ゲル製手首サポーター」。独自配合のゲル素材「クリスタルゲル®」の質感、伸び感、装着感、使用感とすべてにおいて、ストレスフリーな設計です。きちんと固定しながらも、可動域を妨げないので、作業時の負荷も軽減されます。繰り返し洗えるから衛生的かつ経済的です。親指に引っかけてくるっとまくだけの手軽さも!

3 知識はあっても「自分ゴトに結び付けようとしない」
 男性更年期の実態が調査結果から明らかに

イベント会期中には、医療・アカデミア・企業・メディアの各界から著名人が登壇し、最新トレンド・事例・課題・指針などのテーマで発信した「ジェンダード・イノベーション ビジネスカンファレンス」も併催され、多くの来場者が聴講していました。

その中で、フェムテックプレス編集部が注目したテーマは、性差分析の事例の1つ「男性更年期」です。
「一般社団法人 幸年期マチュアライフ協会」代表理事・今井麻恵氏が、「男女で異なる更年期の症状・意識・症状緩和のための行動~2000名調査による考察~」をテーマに、ヘルスケア意識や行動を、性差視点から解説していました。

更年期の諸症状において、女性に多いのがホットフラッシュ・めまい・イライラ・関節痛。男性に多いのが、不眠・腰痛・体力減退・ED・うつ、という調査結果を発表。
また、男性は症状を自覚していても、その症状を更年期によるものだと「認識できていない」、知識はあっても「自分ゴトに結び付けようとしない」ということがわかりました。

さらに、男性は症状を自覚していても不調を周囲に話さず、誰にも相談せず、我慢する人が女性よりも圧倒的に多く、その結果ますます不調が進み、症状が深刻になっていくということが、調査結果から見えてきました。

フェムテック市場が広がるのに併せて、女性更年期への社会的関心が高まりつつある中、今年は男性更年期へシフトしていくと考えられています。
しかし、現状は「男性更年期」に対する世間の関心が低く、関連する情報が少ないことから、症状との向き合い方や対処法などにも消極的な印象を受けると同時に、健康課題や社会生活への影響が懸念されます。

まずはオープンに話せるようになって、取り組む方法も選択できる世の中になれば、と考えます。

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