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【イベントレポート:株式会社ポーラ様】<前編>「生理の話をタブーにしないために」。現役大学生男女15人と吸水ショーツ開発者がディスカッション。

フェムテックプレス編集部

2024.08.13 12:43

女性ならではの健康課題を考える、株式会社ポーラ主催の合同参加型プロジェクト
「タブーを自由にラボ」第2弾

6月25日に日本女子体育大学(東京都世田谷区)で開催された、「タブーを自由にラボ」(共同主催:株式会社ポーラ/日本女子体育大学、アドバイザー:fermata株式会社)。

2024年5月~8月にかけて、計4回開催する同ラボの2回目となる今回は、吸水ショーツブランドOPT(オプト)の開発者である、株式会社Rebolt(レボルト)の内山穂南さんと下山田志帆さん、株式会社ポーラの西澤美紀さんをパネリストとして迎え、フェムケアに興味がある現役大学生15人が参加しました。

【INDEX】前編では1・2をご紹介。

1 「タブーを自由にラボ」とは。


2 信念と熱意から生まれた「吸水ショーツ」。


3 「生理の話」をタブーにしないために。自分が、大学が、今できることは。


4 「声に出して伝えていくこと」が大切。


1 「タブーを自由にラボ」とは。

株式会社ポーラの「フェムケアプロジェクト」が主催し、昨年スタートさせた「タブーを自由にラボ」。女性の健康悩みをテーマに、同じ課題を抱える仲間とともに解決策を考える共同参加型プロジェクトです。
昨年の第1弾では、女性活躍や女性の健康経営に取り組む16の企業と共創。普段では声にしにくいテーマにフォーカスし、有識者の講義やディスカッションなどを通して、課題解決に向けて取り組みました。

第2弾となる今回は、日本女子体育大学と共同で開催し、フェムケアに興味のある現役大学生が対象です。そのきっかけとなったのは、昨年、ラボのなかで課題に挙がった「ヘルスリテラシー向上に関する教育」でした。

生理やPMSなど、多くの人が抱える悩みへの情報や知識が不十分のまま社会人になることで、“必要な時に正しい対処法がわからない”という声が上がったことから、「健康課題を含めた自身の人生にオーナーシップを持つことができる人になってもらえたら」と、社会に出る前の大学生を対象にしたラボを開催することになりました。

ゴールは「何かひとつでも新しい一歩を踏み出せること」。

イベント冒頭のあいさつのなかで、「最初は小規模なコミュニティだとしても、一人ひとりのリアルな声が大学を動かし、もしもプロダクトになったら、社会に大きな影響を与えることができる。一番大事なのは、一人ひとりが抱えている悩み、リアルな声。「タブーを自由にラボ」という場で、普段抱えているモヤモヤをシェアしあいながら、どうやったら解決していけるのかを考えていけたらいいなと思っています。何かひとつでも新しい一歩を踏み出せることをゴールにしたいと思います。」と提案がありました。

続いて、参加者全員が“心理的安全性を保った状態で、ワークショップに参加できるように”と、意識してほしい「参加ルール」についての説明がありました。

たとえば、自分の当たり前が他の人にとっての当たり前ではないこと。無理なく話ができる範囲のことを話すこと。意見の正解・不正解はないので、自分の気持ちや考えをありのままに話しをしましょう。というような、一人ひとりへの配慮があることにより、発言だけではなく、心のハードルも下がるように感じました。

2 信念と熱意から生まれた「吸水ショーツ」。

すべては、自分らしく “WAGAMAMAである” ために。

最初のパネリストは、元プロサッカー選手という経歴を持つ、内山穂南さんとオンライン参加の下山田志帆さんです。
自己紹介では、プロフィール以外にも、自身の生理事情やプロサッカー選手時代の体験談などについて、当時の悩みや心理的な違和感を振り返りながら、その苦悩を語ってくれました。

特に驚いたのは、生理用ナプキンがずれない、漏れないように、トランクスやスパッツを何枚も重ねばきをしていたことや、激しい動きや汗によって試合中のピッチに生理用ナプキンが落ちてしまったという経験談でした。

どんな状況でも生理と向き合わなければならない、生理期間中は自分らしくいられない。
引退後、自分たちの生理体験をもとに、いつだって、自分らしく“わがまま”であるべき、「WAGAMAMAであれ」をミッションとしたアンダーウェアブランド「OPT」を立ち上げます。

「どんな競技のアスリートでも、あらゆる性を持つ誰もが、安心してWAGAMAMAであれる、生理用品なしではくことができる、メンズボクサーパンツ型の吸水ショーツをつくりたかった」と、商品開発の想いを語ってくれました。

下着は肌にいちばん近く、1日のなかでいちばん長く着用しているもの。

もう1人のパネリストは、ポーラの吸水ショーツ開発担当の西澤美紀さん。
長年インナーウエアの企画開発に携わってきた経験から、早い段階から吸水ショーツの可能性を見出し、ポーラでの商品開発を目指し、女性に寄り添った、毎日快適に過ごせる吸水ショーツの企画アイデアを温めていたそうです。

そんな西澤さんに、すでに自身でも使用経験があった及川社長から「吸水ショーツを開発してほしい」という命題が!すぐ開発に着手し、ポーラ初となる吸水ショーツ「フリーフェムショーツ」が誕生しました。
肌にやさしいコットンベースで、ウエストや脚口の設計、生地の厚さ、肌あたりなど、はき心地とデザインに徹底的にこだわりぬいた吸水ショーツは、発売間もなくして完売するほどの大人気商品となったそうです。

商品開発の上で「苦労したこと」や「壁になったこと」。そして「大切にしていること」とは。

吸水ショーツをはけば、それだけでパフォーマンスが変わることがある。

商品開発で苦労したことについて、内山さんは「女性らしいショーツ型だったり、ボクサーパンツ型でも、お尻がきれいに見えるように丸みがついてきたり」と、要望しているメンズライクなデザインのボクサーパンツができなかったことを挙げていました。

オンラインで参加の下山田さんは「アスリートはまだまだフェムテックを知らない。スポーツをしている人たちは、吸水ショーツ、ボクサー型吸水ショーツをはけば、それだけでパフォーマンスが変わることがあると、心から本気で思っている。そのことを伝えても“え、本当に大丈夫なの?”と言われてしまう。その壁をどうやったら越えることができるのか。(学生の)皆さんにもぜひ聞いてみたいですね」と、使用体験までの壁の高さについて語っていました。

その発言に、大きくうなずいていた内山さんも「アスリートにフェムテックを知っているかとアンケートを取ったところ、99%の人が、“知らない、まったくわからない”と回答しているんですよね。これはなかなか難しいぞと思いました」と、フェムテックの認知が広がっていないことを課題視していました。

商品開発で大切にしていること。「自分たちの原体験、そして仲間と一緒につくること」。

商品開発で大切にしていることについて、下山田さんは「女子アスリートのカテゴリでサッカーを続けてきて、LGBTQの当事者でもある自分たちが、まわりのことを見てみると、自分のセクシャリティを理由に、スポーツの現場に行けなかったり、女性性であることを理由に、スポーツ中につらい思いをしている人がいたり。それは“仕方がない”と諦めるのではなく“変えていけること”だと、私たち自身も強く思っている」。

さらに「ジェンダーマイノリティであることを理由に、思い切り走ることができない、思い切り走れるようになるためにはどうしたらよいのだろうか。考え続けたひとつの選択肢として、吸収型ボクサーパンツを開発しました」と、商品開発に至った経緯やその想いを話してくれました。

また、「自分たちの原体験、友人知人、女性アスリートといった仲間と一緒に、一人ひとりの声を聞きながら、みんなが納得する商品をつくることを大切にしている」と、商品づくりにおけるブランドの信念をも伺うことができました。 

知らないことへの不安や表現の規制による「壁」。

「商品開発までは順調でした」と、話を始めた西澤さん。吸水ショーツは完成したものの、商品化にたどり着くまでには、いくつもの壁があったそうです。

サニタリー用ショーツと言えない「法律の壁」 、吸水ショーツを使用したことのない社員への「認知・理解の促進」、販促媒体の作成にあたる「表現の規制」など。
あらゆる壁や困難を乗り越え、さらには商品をお客さまに販売するビューティディレクターの反応はとても良く、お客さまが吸水ショーツを購入してくれたことで安心したと、当時を振り返っていました。

フェムテックやフェムケアを早い段階からなじむために必要なことは、
「世代や性別を問わず、アプローチしていくこと」が大切。

内山さんは「生理については、小学校高学年に女子だけが学ぶため、男子が学ぶ機会が奪われてしまい、大人になって学ぶことはもっと難しい」と話し、チャレンジしていることとして、専門家チームとタッグを組んで、ユースアスリート向けに「コンディショニングセミナー」を開催していることや意識していることについては、「女子アスリートだけではなく、男性の指導者や親御さん、皆さん一緒に聞いてもらうこと」、「身体のことについてみんなでしっかりと学ぶことが、コミュニケーションにもつながっていく」と、活動の重要性についても語ってくれました。

西澤さんは「自分の身体のことを知ることはとても大切。クラブアマゾネス(更年期について考え、学び、仲間とつながる、ポーラ有志メンバーによるワーキンググループ)の活動のなかで、参加者から“20年前に聞きたかった”“娘にこの話をしてあげたい”といった声があり、まだまだ日本はヘルスリテラシーが足りないと感じました。まずは、知ることからはじめてほしい。知ること学ぶことは勇気につながるし、不安の解消にもつながります。ラボに参加したことをきっかけに、健康について情報をキャッチしたら、まわりの人たちにシェアしていただきたいなと思います。発信する相手はセグメントすることなく、情報を広めていっていただけたらうれしいなと思います」と、想いを伝えてくれました。

最初のプロダクト開発が「吸水ショーツ」だった理由とは?
OPTのミッション「WAGAMAMAにあれ」を具現化。

また、会場から「アスリートがブランドを立ち上げる場合は、ウェアやシューズなどをイメージしますが、なぜ吸水ショーツを手掛けたのでしょうか」という質問がありました。

内山さんは、「どうしたら世の中に対して、“当たり前”とか“普通はこうあるべき”ということを問いかけられるんだろうと考えた時に、自分たちが本気でほしいものをつくってみよう。それが、生理に対して“女性がこうあるべき”という考え方に、問いを立てられるのではないかと思ったので、メンズボクサー型の吸水パンツからつくってみようということになりました」と、OPTのブランドミッションから生まれた商品であることを、熱く語ってくれました。

今後の展望について。

下山田さん
じつは、スポーツとフェムケアの相性はいいなと思っています。スポーツの環境だからこそ必要性がわかりやすいですし、スポーツは自分の身体と向き合う時間でもあるので、ケアすることへの興味関心はあると思うんです。

OPTだからこそできることとしては、“パフォーマンスを上げるためにこうしたらよくない?”“これ使ったら純粋にスポーツの時間が楽しくない?”など、スポーツをいい意味で土台にしてもらいながら、フェムケアの話をすることで、日本の社会のなかでフェムテック・フェムケアという言葉が広がっていくのではないかなと思っています。
フェムテック・フェムケアを必要とされている皆さんと市場の懸け橋をOPTが担えたらいいなと、二人で走り回っている状況です。


西澤さん
“ファーストサニタリーショーツを吸水ショーツに”を目指したい。
生理用ナプキンから吸水ショーツに変えるのは、ちょっと勇気がいると思うんですよね。吸水ショーツへの先入観や不安がまだあると思うんですけれども、最初の時から選択肢を持ってもらえたらいいですね。

若い時から新しい選択肢を知っておくこと、当たり前のものとして受け取れる環境があることがすごく大事と締めくくっていました。


<後編>参加学生によるディスカッションはこちらhttps://femtechpress.jp/21596/





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