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妊娠中や授乳中の女性だけではなく、更年期の女性や高齢者も気をつけるべきカフェイン量。
カフェイン・コントロールのすすめ

一般社団法人みんなのフードポリシー

2024.08.08 09:10

 妊婦さんや授乳中のお母さんはカフェインを控えるべき。これはほぼ常識になっている。カフェインには「自律神経の働きを乱す(*1)」「心筋の収縮を促す」「睡眠の質を低下させる」など多数の作用があるが、これらの作用が胎盤や乳腺を通過して胎児や乳児に影響を及ぼすためだ。妊婦がカフェインを過剰に摂ると、出生児が低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性があるとされている。(*2)

 更年期の女性にとってもカフェインは要注意。女性ホルモンが減少する影響で、ただでさえ乱れやすい自律神経にカフェインが作用するためだ。また、女性ホルモンの減少によって起こりやすい骨粗鬆症を助長する可能性もある。これは、カフェインの利尿作用でカルシウムが排出されやすくなることによる。

 また、カフェインの代謝が悪いと日中に飲んだコーヒーのカフェインによって夜の入眠が阻害されることがあり、さらに、カフェインの利尿作用で夜中にトイレに目がさめる回数が増えることもあり、睡眠の質を低下させる可能性がある。

 特に高齢になるほど、睡眠の質の低下が問題となり、そのためにカフェインを控える人も多いということが、デカフェ関係者への取材で見えてきた。

デカフェ(カフェインレス)コーヒーの需要が増えている理由

 2016年にサントリーが「ボス デカフェブラック」を発売し、翌年にはスターバックスが正式に「ディカフェ」の店頭販売を開始。実はこのころから、デカフェ(カフェインレス)のブームが来ると言われていた。

 今のところブームといえるほど大きな波は来ていないものの、その需要は確実にじわじわと増え続けており、輸入量は緩やかに右肩上がり。2000年から2022年の12年間で、デカフェコーヒー豆の輸入量は7倍(*3)にもなっている。
背景には、近年の健康ブーム以外にも、カフェインの体に対する影響が知られるようになってきたことが挙げられる。

 また、カフェインの過剰摂取による健康被害や死亡事故なども起きており、アメリカやカナダ、欧米などコーヒー消費量の多い国々では、カフェインの1日あたりの摂取目安量を決め、国民に過剰摂取への注意喚起を行っている。
そういった国を中心に、普通のコーヒーに代わるものとしてデカフェの需要が伸びており、そのような状況の影響が、日本での需要の伸びにもつながっているとみられる。

デカフェコーヒーは美味しくなってきている

 デカフェコーヒーの需要が伸びるのに伴い、単なるコーヒーの代用品としてではなく、デカフェコーヒーに普通のコーヒーと同じようなクォリティを求める人が増えており、それによってデカフェコーヒー全体の質が上がってきているようだ。

 具体的には、スペシャルティコーヒーと呼ばれる高品質の豆がデカフェにも使われるようになってきている。さらに、ここ最近、個人経営の自家焙煎のコーヒー店が全国的に増えているが、そういった店を中心にデカフェ豆の焙煎方法や淹れ方の研究もなされているようだ。

書籍『デカフェにする?』の出版

 今回出版した『デカフェにする?』では、「カフェインを摂りすぎるとどうなるのか」「デカフェとはどのようなものか」「なぜデカフェの需要がのびているのか」について、わかりやすく解説した。

 著者の井澤裕子は、何をしても止めることができなかった心臓の激しい動悸が、カフェイン断ちで嘘のようにぴたっと治るという経験をし、それがこの本を書くきっかけとなった。

 カフェインの、自律神経の働きを乱す、心筋の収縮を促すなどの作用が動悸の原因になっていたと思われる。

 調べていくと、その他にも、利尿作用や胃酸分泌作用、中枢神経を興奮させるなどさまざまな作用があり、カフェインを過剰に摂取すると、めまいや震え、不安、不眠や下痢、吐き気、嘔吐などを起こすことがあることがわかった。

 カフェインは、実はアルコールなどと同じく、量をコントロールしながら摂らないと健康被害につながる危険な物質なのだ。

カフェイン・コントロールという選択

 デカフェコーヒーが美味しくなってきているのだから、カフェインの摂りすぎに注意したい場合は、普通のコーヒーかデカフェかの二択ではなく、時間帯や体調に合わせて飲み分けることで、カフェイン量をコントロールする飲み方を提唱したい。

 アメリカやカナダ、欧州の推奨量を参考にすると、健康に影響を与えない量は1日400mgほど(*2)。

 コーヒーはカフェイン入りとデカフェを、体調や時間帯などで飲み分けして、カフェイン摂取量を400mg以下にコントロール。そんな飲み方がこれからのコーヒーとの付き合い方の当たり前になるかもしれない。

『デカフェにする?』は、そんな未来をうらなう1冊だ。

【Amazon販売ページ】

https://www.amazon.co.jp/dp/B0D8KW8RHW
・電子書籍:780円
・ペーパーバック:1980円(税込)
『コーヒー好きのためのカフェインとデカフェの本 デカフェにする?』

(*1)日本栄養・食糧学会誌 第65巻 第3号「コーヒー摂取が胃連動および自律神経活動に与える効果の検討」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs/65/3/65_113/_pdf
(*2)厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170477.html
(*3)参考:全日本コーヒー協会「デカフェコーヒーの輸入推移」
https://ajca.or.jp/pdf/data-decaf202312.pdf

いさわゆうこ(井澤裕子)プロフィール

一般社団法人みんなのフードポリシー代表理事。
食品保健指導士。
女性の健康と目のポーズ協会 女性の健康推進員/女性の健康経営推進員。
グラフィックデザイナー/ライター。

1988年米国カリフィルニア州California College of Arts グラフィックデザイン科卒業。デザイン業のかたわら立ち上げたイタリア直輸入オリーブオイルのEC事業(2005年~2014年)を行うなかで、食品の栄養や機能性に目覚め、食品保健指導士の資格を取得。以降、食品関連企業を中心にデザインやプロモーション企画の仕事に携わる。食と健康に関する書籍をAmazonから発売中。

神戸市在住。

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