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【特集インタビュー 小林製薬株式会社様】女性のQOLを守る防災へ。デリケートゾーンケアから考える、企業・自治体ができる「フェムケア備蓄」<04>
フェムテックプレス編集部
2025.09.19 09:45
ビジネスにアイデアをひとさじプラス——。
「フェムテックプレス」では、掲載プレスリリースをきっかけに、業界の注目キーワードを深掘り。企業担当者へのインタビューを通して、フェムテック・フェムケアの現場を紐解いていきます。
Vol.18のキーワードは「フェムケア視点の防災対策」。
【04】女性の人生に、もっと寄り添うために。
ブランドの垣根を超えて生まれた「フェムケアプロジェクト」。
「命の母」「フェミニーナ」「サラサーティ」——女性のさまざまなライフステージに寄り添い、“見過ごされがちなお困りごと”に向き合ってきた小林製薬の代表的なブランドたち。
そして今、これらのブランドを横断し、一人の女性の人生全体を見つめる「フェムケアプロジェクト」が進行中。そのきっかけは、展示会で寄せられたお客様の一言でした。全社一丸でフェムケアに取り組む背景には、女性の声に耳を傾け続けてきた企業だからこそ見えてきた想いがありました。
【Profile】
小林製薬株式会社
(左から)広報担当 黒岩さん 古川さん
フェムケアプロジェクト 白石さん
サラサーティ ブランドマネージャー 山下さん
【INDEX】
01 “声なき声”に耳を澄まし、“あったらいいな”をカタチに。小林製薬が大切にしてきたもの。
02 正しく知ることが、最初のケアになる。成長のサインである「おりもの」を、親子や学校でどう伝える?
03 “自分のからだ”に合った備えが、いちばんの安心になる。小林製薬と考える「フェムケア視点の災害時のセルフケア」。
04 女性の人生に、もっと寄り添うために。ブランドの垣根を超えて生まれた「フェムケアプロジェクト」。
—— フェムケアプロジェクトを立ち上げた背景には、どのような課題や想いがあったのでしょうか。
白石さん:
私自身、この「フェムケアプロジェクト」の立ち上げメンバーを務めています。
小林製薬では、「フェムテック」という言葉が広まる以前から、見過ごされがちなお困りごとに寄り添い、解決につながる製品を作り続けてきました。
その結果、「命の母」「フェミニーナ」「サラサーティ」など、女性のライフステージに寄り添う製品が育ってきましたが、これまではブランドごとに部署も異なり、それぞれが個別に活動している状態でした。
転機となったのが、2022年に開催された「Femtech Tokyo」への出展です。初めて複数ブランドで合同出展した際、来場されたお客様から「フェミニーナも小林製薬だったんですね!」「サラサーティも!」「ありがとう、小林製薬さん!」といったお声を数多くいただきました。
その反応を通じて、「ブランドごとではなく、小林製薬全体として、一人の女性の人生に寄り添えるのではないか」と、私の中で大きな気づきが生まれました。
女性は、人生の節目や大切なタイミングでからだの不調と重なることが少なくありません。生理、PMS、更年期、妊娠・出産など、症状や悩みの現れ方も人それぞれです。例えば更年期だけをとっても、「100人いれば100通り」と言われるほど個人差があります。
そうした一人ひとり異なる不調や不安に、タイミングごとにやさしく寄り添える存在でありたい。その想いから、2023年にフェムケアプロジェクトを本格始動させました。
山下さん:
私は2023年からこのプロジェクトに参加しています。2022年は白石のサポートとして関わっていたのですが、当時はまだブランド間での交流が少なく、部署を超えて話す機会も多くはありませんでした。
一緒にプロジェクトを進めるようになってからは、展示会でのブース作りなどもブランドの垣根を超えてアイデアを出し合えるようになり、とても実りある活動だと感じています。小林製薬だからこそ実現できる、大きな意味を持つ取り組みだと実感しています。
—— プロジェクトを通じて、社会全体にどのような変化や価値を届けたいとお考えですか。
黒岩さん:
広報として、そして一人の父親としてもお話しさせていただきます。これまでのお話にもありましたが、「おりものシート」という存在は、どこかタブー視され、女性自身のからだのことなのに、“話しにくいもの”と感じられてきたのが現実だと思います。
しかし私たちは、そうした“見過ごされがちなお困りごと”に対して、「こうすれば解決できますよ」と発信を続けてきました。その積み重ねにより、今では女性自身が前向きに課題に向き合えるようになってきたと感じています。
そしてこの流れは、今後、男性や社会全体にも広がっていくはずです。実際、今日のお話を伺いながら、私自身も「あ、そうだったのか」と気づかされることがたくさんありました。
娘が小学3年生なのですが、今日さっそく『初めてのおりものブック』を使って話してみようと思いましたし、こうした親子の会話のきっかけを、少しずつ増やしていくことも、広報としての大切な役割だと感じています。
今後は、メディアの皆さまと連携しながら、男性目線も交えた発信を広げていくことが、ますます重要になってくると考えています。
白石さん:
フェムケアプロジェクトを通じて、全社で女性の人生全体に目を向けられるようになりました。
その結果、これまで見過ごされてきた悩みや、まだ世の中に存在しない“必要な製品”にも気づき、開発へとつなげていけると感じています。
女性の悩みは表面化しにくく、内に秘められていることが少なくありません。
だからこそ、そうした声に丁寧に耳を傾け、製品というカタチで応えていきたいと思っています。
また、製品を届けることだけでなく、「こういうことで困っている人がいる」という事実を社会に伝えていくことも、小林製薬の大切な役割です。
これからも、声にならない想いや小さな悩みに寄り添いながら、必要なケアと情報を丁寧に届けていきたいと考えています。
—— 長年にわたり広報をご担当され、現在は小林製薬ミュージアムの館長を務めていらっしゃる岩田さんからも、一言お願いいたします。
岩田さん:
小林製薬の原点には、創業者である小林忠兵衛の精神があります。
これは、伝染病が蔓延し、医薬品が十分に行き渡っていなかった創業当時、深刻な衛生環境の中で生まれたものです。
そんな厳しい時代に、「困っている人を放っておけない」という想いから立ち上がったのが、創業者の小林忠兵衛でした。この“お困りごとを見過ごさない”という姿勢は、今もなお私たちの企業活動の根幹として脈々と受け継がれています。
白石もお話ししたように、世の中には声を上げられず、ひっそりと悩み苦しんでいる方がたくさんいらっしゃいます。そうした方々に対して、小林製薬ならではの視点で気づき、製品化し、分かりやすい広告を通じてメッセージを発信してきました。
小林製薬が率先して発信してきたことで、少しずつ世の中の認識も変わり始めているのではないかと感じています。
これからも、私たちにしか届けられない価値を社会に発信していきたいと思っています。
【Company Data】
小林製薬のルーツは、1886年に創業した「合名会社小林盛大堂」にあります。その後、1919年に「株式会社小林大薬房」を創立し、1956年に「小林製薬株式会社」に社名を変更しました。
小林製薬は、「“あったらいいな”をカタチにする」というブランドスローガンを掲げています。これは、人々の「見過ごされがちなお困りごと」を発見し、それを解決するユニークな製品を創造することで、新しい市場を開拓していくことを目指すものです。
医薬品から芳香剤、食品まで、約150ブランド(※)と多岐にわたる製品カテゴリーを展開しているのは、この独自のビジネスモデルに理由があります。特定の領域にこだわらず、お客様の“困りごと”を起点に製品開発を行うビジネスモデルが、多様なラインナップを生み出す強みとなっています。
※2024年末時点
Text:菅野由美香(フェムテックプレス編集部 編集長)
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