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【特集インタビュー フェムテックプレス・スクープ】
社会課題の「更年期」が「幸年期」となる社会の実現を
目指していきたい。

フェムテックプレス編集部

2023.11.14 14:00

ビジネスにアイデアをひとさじプラス———。
「フェムテックプレス」掲載のプレスリリースから、フェムテック・フェムケア業界のトレンドワードをキャッチアップし、企業担当者にインタビューします。

Vol.05のキーワードは「企業研修で学ぶ更年期」。

女性の健康課題としてヘルスケア業界でもブルーオーシャン市場だった「更年期」。社会人時代、会社のベンチャー制度で「更年期は社会課題になる」と先読みし、公募を繰り返すも最終的には独立。「一般社団法人 幸年期マチュアライフ協会」を発足しました。
更年期を人生の次へのステップとしてとらえ、次のアクションに向けた、「心地よい更年期生活=幸年期マチュアライフを送る人が増えること」を目指し、活動を開始してこの10月で2年目を迎えた、代表理事の今井麻恵さんにお話を伺いました。

【Profile】
一般社団法人 幸年期マチュアライフ協会 
代表理事 今井麻恵さん

【INDEX】

●経験してわかった症状のつらさ。更年期という社会課題を解決したい。
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●「更年期って幸せになれるんだ」。更年期を“幸年期”に変えたい。
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●企業研修で大切にしたいのは、自分事化しやすく、話しやすい雰囲気づくり。
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●「更年期ロス」をなくす、生まない社会をつくることを目指して。
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経験してわかった症状のつらさ。更年期という社会課題を解決したい。

—— 今井様のご経緯について教えてください。

以前は総合広告会社の営業として、製薬会社や食品会社などヘルスケアに関連するお客様を担当し、その後は人材育成業務を担当していました。
30代最後の春、会社の健康診断から初期の乳がんと診断されました。場所が悪かったため、左胸を全摘出しまして、同時再建をする経験をしました。病理検査の結果、ホルモン治療だけで放射線治療や抗がん剤はせずに、40歳から5年間ホルモン剤を投与することに。

治療中、閉経の状態を作ることで疑似更年期が起きると言われていましたが、数ヵ月後にはホットフラッシュに襲われ、40歳で更年期症状を味わうことになったんです。
その後、月経は戻りましたが、今度は本来の自然の更年期症状が現れて。漢方薬を飲み続けていても、体調によってホットフラッシュがひどかったり、気持ちが落ち込んだり。つらい日々が続きました。

—— 「更年期」に着目したのはご自身の体験からでしょうか。

更年期について自分なりに調べていたころ、会社のベンチャー制度の募集があることを知りました。「今後、更年期は社会課題になる」。そう先読みして提案をしたのが始まりでした。

事業計画書を提出し、社内審査を受けるのですが、最初の年は女性の更年期についての提案でした。当初は審査員の方も「え、更年期?」といった感じだったんですけれども、フィードバックをもらい、調整して提案するという年月を繰り返し、3回目からは「男性の更年期」についても盛り込みました。
7回目には、社会が更年期に注目をしはじめ、女性だけではなく男性にも啓発していく必要があると。次でダメならば会社を辞めるチャンスなんじゃないかと勝手に思い込んでしまいましたね。

結果、会社を退職し、先に会社を辞めていた同僚と一緒に、2021年10月26日「一般社団法人 幸年期マチュアライフ協会」を立ち上げました。

「更年期って幸せになれるんだ」。更年期を“幸年期”に変えたい。

—— 「幸年期マチュアライフ」とても素敵なお名前ですね。由来についてお聞かせください。

ありがとうございます。自分が疑似更年期になった時に、最初は「こんなにひどいことに皆さん立ち向かっているんだな、格闘しているんだな」というイメージでした。
ただ、更年期の先輩方のお話を聞いているうちに、情報を知っていくだけでも気持ちが楽になると同時に、それを行動に移すだけで「あっ更年期って幸せになれるんだ」という風に思って。前段でお話しましたベンチャー制度の2年目くらいから、「更年期を“幸年期”に変えるんだ」ということを言い続けていました。

「マチュアライフ協会」という名前ですが、「マチュア」は熟したという意味があり、化粧品業界やファッション雑誌などでは、「マチュアな女性」というように使われることが結構あるんですよね。40代後半から50・60代の「マチュアな人たちの幸せな生活を実現させる」そんな思いも込めています。

企業研修で大切にしたいのは、自分事化しやすく、話しやすい雰囲気づくり。

—— 企業で更年期について研修する意義とは。

女性活躍が推進されているなかで、生理休暇や妊活への理解については進んできているように感じます。その次にライフステージとして、女性の場合は更年期があります。更年期は期間ですので、症状のない方、ある方いらっしゃいますが、症状のある方のほうが多いです。

今は在宅ワークという働き方もありますが、会社に行けない、電車に乗れない、出社できない。また、自分の体調が悪いので、自分の業務以外のことは手がまわらない、だからキャリアを諦めざるを得ない。会社によっては退職せざるを得ない状況があるかもしれません。

更年期に起こる不調は、社会課題となっています。女性だけのものではなく、男性にも起こります。
企業研修では、更年期の基礎については座学で、カードゲームとキャリアについては、ワークショップで学ぶような組み合わせにしています。まずは、管理職の方々向けの研修を用意しました。

—— 『更年期が幸年期になるカードゲーム』の制作背景について教えてください。

更年期の知識を学ぶこともですが、症状のことだけを知るのではなくて、何を次のアクションとしてやったらよいか、ゲームをしながら気づきを話していただきたいというような思いで、このカードを作りました。
カードゲームの中には、セルフチェックシートを入れているのですが、女性の更年期と男性の更年期、それぞれに該当する症状が項目に入っています。

参加者がイメージしやすいような人物像であったり、悩んでいる症状であったり、会社でのキャリアやおかれている状況をわかりやすく設定して、その人のためにどうアクションを起こすことができるかをディスカッションしていきます。

—— アクションカードや症状カードの内容も具体的ですね。作る時に参考にしたものはありますか。

どちらも私たちが2,000名に調査したアンケートの回答やフリーアンサーのコメントからピックアップしています。皆さんの対処法だったり、症状だったり、リアルな声から生まれています。
また、あまり専門的な言葉を使ってしまうとかなり難しくなってしまうので、なるべくかみ砕いて、わかりやすく表現しました。
症状カードもアクションカードも、私たちで作成したものを婦人科の先生、泌尿器科の先生に最初の段階から監修していただきました。

—— こういったツールがあることで、確かにディスカッションしやすいように感じます。

参加者の方が当事者になることは多いのですが、男性の場合は気づかない。でもこのカードを見て「自分にも当てはまる」と気づいて、チェックリストを見たり、男性同士では話しづらかったりする内容でも、カードがあることで「俺もそうかも」と、話しやすい雰囲気にもなりますよね。

—— 最近は「男性の更年期」も注目され、知られるようになりました。

私たちのアンケート調査によると、男性の更年期について「具体的に知っている」「具体的な症状までは知らないが関心がある」という人を合わせると5割です。一方でその半数は「関心もない」、18%くらいが「聞いたことがない、まったく知らない」という結果でした。

女性は男性の更年期に関して、やはり5割くらいの方が知っていて、関心もあるんですよね。ご夫婦やカップルでしたら、パートナーの男性の更年期に女性が気づいてあげられるといいのかなと思いますね。

—— ご家庭でも役立ちそうですね。

今年の調査で、更年期男性の心配ごととして「家庭内の不和」が上がっていました。それは自分の体調の変化で不和が起きないかということのようです。たとえば自分が40代であれば、お子さんはまだ思春期だったりもします。そうすると、お父さん、お母さん、思春期の子どもとイライラしている人たちばかりが家にいる環境になってしまう。家族の中で相手を気遣うことは、とても重要になってきます。

「更年期ロス」をなくす、生まない社会をつくることを目指して。

—— 最後に今後の活動についてお聞かせください。

NHKが2021年11月、更年期症状によって「仕事に何らかのマイナスの影響があった」、いわゆる「更年期ロス」にあたる人の調査結果を発表しました。その数は、推計で100万人とされ、女性が75%、男性が25%でした。さらに、数字に換算したところ、「更年期離職」による経済損失は、男女合わせて年間でおよそ6,300億円にも上ることがわかりました。
この6,300億円は、じつは日本のコミック市場に近い規模、大きな数字です。したがって、私たちはこの更年期ロスという状況をものすごく大きな社会課題としてとらえて、企業研修でも伝えていくべきと考えています。

まずは「更年期ロス」をなくす、生まない社会をつくることを目指しての啓発活動であり、研修事業を進めることが一番です。今後も、人生100年時代の「健幸なウェルビーイング」の礎となるような啓発活動を進め、男女マチュア世代の幸年期に向けたアクションをサポートしていきます。

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【Company Data】

男女マチュア世代の「更年期」における「不」の解消と、その先にある「ウェルビーイング」の実現をサポートすると同時に、それを支える、地方自治体・企業・団体など様々な分野の専門家が増えていく社会基盤を整備し、「更年期」が 「幸年期」 となる社会の実現を目指す活動をしている。

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