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最強の防災は「ご自愛」だった。女性の体と心から考える“私を守る備え”【WEHealth トークセッションレポ】
株式会社ステルラ
2026.03.31 09:05

©WEHealth
WEHealthは、毎年3月の国際女性デーに合わせて開催する“わたしを祝うフェスティバル”。
2026年3月6日に行われたトークセッション「その防災、本当に“わたし向け”ですか?女性のカラダとココロから考える、防災の新しい視点」に、フェムテックプレス編集部が潜入。
トークセッションには、防災アナウンサーの奥村奈津美さん、エッセイストの犬山紙子さん、産婦人科医の洲河美貴先生が登壇し、女性が災害時に直面するリアルな課題と、今日からできる備えについて話し合いました。
防災は「特別な準備」ではなく、“日常の延長”でできる
奥村:「防災と聞くと、特別な準備をしなければいけないと思う方も多いかもしれません。でも実際は、災害は私たちの暮らしの中で起こるもの。今日、この帰り道に地震が起きる恐れもあります。だからこそ“もしも”の時だけでなく、“いつも”の自分を守る視点で防災を考えることが大切なんです」
ーー奥村さんは、東日本大震災当時、仙台のテレビ局でアナウンサーとして勤務していました。被災しながら災害報道に携わる中で、強く感じたことがあったといいます。
「あの時、痛感したのは『起きてからでは手遅れだ』ということです。どれだけ情報を伝えたくても、停電などでテレビを見られる状況ではなく、伝えることすらできませんでした。そういった経験から、この15年は啓発活動や被災地支援に力を入れています」
災害時、多くの人は避難所ではなく「在宅避難」となる現実
ーー「災害=避難所へ行く」と考えがちですが、実際には「在宅避難」となる人のほうが圧倒的に多いというデータがあります。
奥村:「首都直下地震などの大きな災害でも、避難所は家を失った方のための場所。多くの方は自宅で被災生活を送ることになります。在宅避難でも公的な支援を受け取れますが、物資が届くまでの間は、自分の家の備蓄で命をつなぐことになります。国は最低3日、できれば1週間分の備蓄を推奨しています。一方、避難所での自治体の備蓄状況を見ると、生理用ナプキンは9割の自治体にあるものの、防犯用品や下着の備蓄はわずか1割程度です」
犬山:「ナプキンがあるのは嬉しいけれど、量が多い人、肌が弱い人、パンツ型を使っている人、そうしたバリエーションへの配慮も必要だと感じます。災害時は毎日お風呂に入れないことも多く、清潔を保つのが難しい状況になります。その点でも、ナプキンだけでは不安が残るというのが正直な感想です」
体の不調を言えない…。被災地で生まれる「わがまま」という思い込み
ーー犬山さんは東日本大震災時、難病の母親を介護するために宮城の実家へ戻り、ライフラインの止まった自宅で避難生活を送りました。
犬山:「水が貴重なので、トイレを流すのにも罪悪感があるんです。そうなると、自然とトイレを我慢し、水分を摂らなくなる。生理用品が足りない、体が痒い、メンタルがボロボロ。そんな悩みがあっても、“こんなことを言うのはわがままなのではないか”と、つらさを口にすることすら難しい空気が当時はあったように感じます」
洲河:「トイレを控える状況が続くと、膀胱炎などの感染症のリスクが高まります。長時間同じ姿勢で過ごすことで、血栓ができるエコノミークラス症候群になりやすくなるとも言われています。
女性特有の問題として、生理前に強い眠気やイライラなどの症状が出る方もいます。中には、日常生活に支障が出るほど症状が重い『月経前不快気分障害(PMDD)』の方もいて、こうした症状は災害時のストレスによって強く出ることもあります。
災害時にはこうした体調の変化が起こる可能性があるということを、事前に知っておくことが大切だと思います」
防災備品の意思決定に女性の声が届いていない
ーーなぜ女性向けの備えがこれほどまでに手薄なのか。本セッションでは「自治体の防災危機管理部局における女性職員の割合」というデータが提示されました。
奥村:「防災の舵取りをする部署の女性割合は、東京に関しては5人に1人という割合でした」
犬山:「意思決定の場に女性が3割いないと、意見が反映されにくいと言われますよね。その結果として『ナプキンしか用意されていない』『防犯対策が後回し』といった状況が生まれているのかもしれません。まずはこの現状を把握し、自分で備える意識が必要だと思います」
フェムテックで防災をアップデートする
ーー具体的な備えとして、「MKケア(まもる・きれい・ケア)」という考え方を紹介。女性の体に必要なアイテムをまとめたもので、登壇者が実際にバッグに入れているものは、明日から真似できるものばかりです。
【災害時に役立つ4つのアイテム】
■おりものシート: 下着を替えられない状況で、シートを替えるだけで清潔感が劇的に変わります。「場所も取らないため、リュックに常備しています(犬山)」
■おしり拭き(赤ちゃん用): アルコールフリーのものは、デリケートゾーンの拭き取りから体拭きまで万能。大人にとっても必須アイテムです。
■災害用トイレ: 断水時に自宅のトイレで使うもの。「避難所のトイレは不衛生だったり、性被害のリスクがあったりすることもあるので、家で安心して用を足せる備えは命を守ることに直結します(奥村)」
■半透明ビニール袋: 使用済みの生理用品などを捨てる際に必須です。
女性の体の悩みにも防災の備えを
洲河:「生理の症状が重い人は、ピルなどの力を借りる方法もあります。持病がある場合は、かかりつけ医に相談し、2週間程度の予備薬を処方してもらうなど、医療面での備えも防災チェックリストに入れておくと安心です」
SOSを出すことは、わがままじゃない
ーー身体的な備えと同じくらい重要なのが、「受援力」つまりSOSを求める力。
犬山:「多くの人が自分のことを後回しにしてしまいがちですが、自分をケアすることも大切な権利のひとつです。倒れてしまう前に、SOSを出す練習をしておきましょう。
生理痛で動けないとき、「サボりだと思われないか」と不安になる人もいるかもしれません。それは甘えではなく体の不調。普段からパートナーや友人と自分の体のことを話しておくことも大切だと思います」
洲河:「特別なことがなくても、婦人科に相談に来ていいんです。基礎体温をアプリで記録しておくだけでも、自分のリズムを把握しておくことも、災害時の不安を減らすことができます」
最強の防災は「ご自愛」である
洲河:「日本女性財団でチャリティイベントを行い、経済的に苦しい女性への医療支援などを行っています。女性をエンパワーメントすることが防災力の向上に繋がっていたら嬉しいです」
犬山:「今日から、大切な人と自分の体のことを話してみてください。男性も知っておくべき話です。そして、何よりも自分を大切にする『ご自愛』を忘れないでください。その習慣が、いざという時に自分を守るSOSに繋がります」
奥村:「最強の防災は、健康でいることです。日常の延長で、自分を大切にするためのアクションを、今日から一つでも始めてみてください」
以上でトークセッションは終了しました。
日常で生理用品を備えておいたり、モバイルバッテリーを用意したり、かかりつけ医に相談したり。そんな小さな備えが、いざというときの私たちを支えてくれます。
そして何より大切なのは、自分の体を大切にし、 健康であること。日頃から自分をいたわることこそが、最強の防災なのかもしれません。
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