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【取材レポート:株式会社キャンプ】カップ付きTシャツの新しい選択肢。ブラレスウェア『no-bu』が提案する締め付けない快適さ
フェムテックプレス編集部
2026.07.15 10:55
アパレル未経験の女性2人が、フィンランドのサウナ旅から生み出した「ブラレスウェア」という第三の選択肢

鈴木 愛子 COO (写真左)、榊原 美歩 CEO (写真右)
ゴムもワイヤーも使わず、それでも1枚で堂々と外に出られる服。そんな「あるようでなかったもの」を、アパレルの知識ゼロから生み出した女性2人がいます。株式会社キャンプ CEO・榊原美歩さんとCOO・鈴木愛子さん。大手企業でのキャリアを手放し、30代後半でゼロから挑戦した2人。「ブラレスウェア」誕生の物語を伺いました。
15年越しの「友人」がビジネスパートナーに

2人の出会いは、今から約15年前。友人の友人という関係でしたが、距離が縮まったのは榊原さんが会社を辞めてフリーランスになるタイミングでした。
榊原さん「独立する時にお金や税金のことが不安で、そういえば会計士の知人がいたな、と思い出して。そこから親しくなりました」
以来、2人は仕事を通じて交流を深め、いつか自分たちで事業を立ち上げたいという想いを共有するように。その夢を形にしたのが、2024年に設立した株式会社キャンプ。
2人の役割は明確に分かれており、榊原さんはコンセプト設計や商品開発、マーケティング領域を主導。鈴木さんはApple、Spotifyなどグローバル企業で会計・ファイナンスを担ってきた経験を活かし、配送のセットアップから広告運用まで、バックオフィス全般を統括しています。
鈴木さん「榊原は0から1を作るのが得意で、私はそれを安定的に回す側。細かいところは私がやる、という感じですね」
フィンランドのサウナで受けた「カルチャーショック」
ブランド誕生のきっかけは、2023年のフィンランドへのサウナ旅。もともとサウナ好きの2人が、その本場・フィンランドを訪れました。
榊原さん「街中をノーブラで自然体に歩く女性たちがいて。パッドのない水着が当たり前のように並んでいて。日本ではなかなか見られない自由な価値観に、すごく衝撃を受けました」
鈴木さんは、旅行前から楽しみにしていた、マリメッコの代表的な「ウニッコ」柄の水着を発見。デザインは理想そのものでしたが、水着には胸のパッドが付いていませんでした。
鈴木さん「すごく買いたかった。でも日本でこれは着れないなって。結局諦めてしまって」
帰国後、2人は銭湯へ向かった。そこで目に入ったのは、若い人にも年配の人にも、くっきりと残る「ブラジャーの跡」だった。
榊原さん「せっかくリラックスしたのに、ブラを付けてあの締め付けにまた戻っていく。そのモヤモヤが、ブラレスウェアを作るきっかけになりました」
「ないなら、自分たちで作るしかない」

2024年Makuakeで販売した最初のブラレスウェア
フィンランドから帰国した2人は、「こんな服があったらいいのに」というアイデアを形にしようと動き始めます。とはいえ、二人ともアパレル業界は未経験。「これはプロの力を借りるしかない」と最初に頼ったのは、ウェディングドレスのデザイナーとして活躍する鈴木さんの義妹・Eri Suzukiさんです。
しかし、企画が思うように進まず、「このアイデアは難しいかもしれない」。そう感じた二人は、一度は開発を諦めることも考え、Eriさんにその思いを伝えるつもりでいたといいます。ところが、返ってきた言葉は二人の予想を大きく覆すものでした。
鈴木さん「『そんなことで悩んでいるんですか。こうすればできますよ』って、本当にあっさり言ってくれたんです。自分たちは分からないから諦めようとしていたけれど、知っている人からすると解決方法がちゃんとある。『全部分かってから始めなくてもいいんだ』って、その時に思えました。」
それ以来、分からないことは、その道のプロに聞く。二人は業界の常識に縛られることなく、「こんなものを作りたい」と伝え続け、多くの協力者を巻き込みながら少しずつ理想の形へ近づけていきました。
千駄ヶ谷でミシンを見ては「ピンポン」
アパレル業界の人脈もコネもない2人は、工場探しから難航。片っ端からメールを送ったが、返信すら来ない日々が続きました。
鈴木さん「千駄ヶ谷はアパレル会社が非常に多く、ミシンがある会社を見つけては直接インターホンを押すような泥臭いこともしました」
何件も断られる中、たまたま声をかけたアトリエの隣にあったアパレル会社が、面白がって協力を申し出てくれました。「新しいことにどんどん挑戦したい」という社風の会社との出会いが、その後の商品開発を大きく前進させます。
「素人だったから」生まれた特許技術


胸の構造
ブラレスウェアの最大の特徴は、ゴムもワイヤーも使わず、バストトップの透けを防ぐ「特殊構造の裏地」にあります。
開発のヒントになったのは、ブラジャーの解体でした。裏地のレースに注目し、「もしかしてこれ、透けを防ぐためについているのでは」という仮説を立て、そこから凹凸のある特殊素材を裏地に用いる構造を考案。工場の担当者も最初は半信半疑だったそうですが、実際試作すると効果が実証されました。
従来の固定パッドから、バストトップの位置に合わせて動かせる「調整パッド」の開発にも成功。2025年にはパッドの特殊縫製で意匠権を取得し、パッド部分の特許を申請しています。同年ブラレスウェアは2025年グッドデザイン賞を受賞しています。
この仕組みは、アパレルと下着、どちらの業界知識もなかった2人だからこそ思いついたこと。
榊原さん「工場さんやパタンナーさんに言うと、毎回『そんな発想は思いつきませんでした。どうやって考えたんですが』と言われる。逆に業界のプロだったら、思いつかなかったんじゃないかと思っています」
クラウドファンディング26時間で完売!広がるユーザーの声
最初に実施したクラウドファンディングでは、「応援コメント」を通じて、二人も予期してなかったニーズが明らかになりました。
榊原さん 「サウナやヨガの後に着てもらえたらと思っていたんですが、実際には『普段着として毎日着たい』という声が圧倒的に多かったんです。そこで初めて、『これはサウナウェアではなく、新しいカテゴリーになるかもしれない』と感じました」
開発当初には思いもしなかった使われ方も見えてきた。
乳がんの手術を受けた女性からは、「傷口がある時期でも締め付けを気にせず着られた」といった声が複数寄せられた。「災害時にも役立つんじゃないか」という声も届き、ブラレスウエアの可能性が見えてきます。

2026年Makuakeで販売したブラレスウェア

裏側
福島県出身の鈴木さんは、以前から災害時に避難所で女性が抱える「ブラジャーを干せない」「寝る時も着け続けなければならない」といった課題を身近に感じていました。そうした背景もあり、ブラレスウェアは日常だけでなく災害時にも活躍する"フェーズフリー"なアイテムとして注目されるようになります。
その縁から、2025年には鈴木さんが福島県矢吹町の女性防災アドバイザーに就任。ブラレスウェア100着を寄贈する取り組みにもつながりました。
鈴木さん「私たちが想像もしていなかった場面で役立てていただいていて、お客様の声から新しい可能性を教えていただいています」
挑戦する勇気の源。母が残した「悔いの残らない人生がいいわね」という言葉
安定したキャリアを手放し、未知の業界に飛び込んだ2人。その原動力はどこから来くるのでしょうか。
榊原さん「母が亡くなる前に、『後悔の残らない人生がいいわね』と言い残してくれて。その言葉から、自分の選択が変わりました。今やりたいと思っているのにやらなかったら、絶対最後に後悔する。だから、とりあえずやってみようと」
鈴木さんの動機は、会計士として積み重ねてきた経験への問いかけから生まれました。
鈴木さん「コロナ禍では、コストカットや事業縮小に関わることも多くて。何かを減らすことではなく、何かを作り出して、人に喜んでもらえる仕事がしたかったんです」
2人は自分たちを「おばベンチャー」と呼ぶ。20代の輝かしいスタートアップではなく、30~40代でキャリアの途中から方向転換した自分たちの姿を、同世代の女性たちに届けたいからです。
鈴木さん「やりたいことが全部わかってなくても、やりたいという気持ちがあれば、周りに助けてくれる人がいっぱいいる。始めてしまえば、みんなが船を漕いでくれる。それが実感です」
「第三の選択肢」を、世界へ
現在、ブラレスウェアは「ブラ」「ブラキャミ」に続く第三の選択肢として市場を広げつつあり、これまではECサイトを中心に展開してきましたが、今年からは百貨店でのポップアップも始まり、7月には兵庫の神戸阪急、東京の新宿高島屋での出店も予定しています。
榊原さん「女性が自分の快適を自分で選べる、そういう価値観に気づいてもらうことを、商品を通してやっていきたい。国内にとどまらず、まず東アジアを含めた海外展開も視野に入れています」
フィンランドのサウナで感じた「自由」は、1枚の服という形を得て、少しずつ日本の日常を変えようとしています。
会社概要
会社名 : 株式会社キャンプ
所在地 : 東京都渋谷区千駄ヶ谷5- 12- 16益本ビ2F
代表取締役:榊原 美歩
設立 : 2023年8月
事業内容 : 商品企画・販売、イベント・ワークショップ企画・運営
No-bu公式サイト:https://no-bu.shop/
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