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【現地レポート】株式会社カノアクルー×株式会社キャンプ
後編:広がるアピアランスケアの選択肢|乳がん治療後の「身体と暮らし」を考えるメディア勉強会
フェムテックプレス編集部
2026.10.20 11:20
見て触れて知るアピアランスケア :ルアナブレストとno-buのブラレスウェア
■前編の記事はこちら
2026年9月25日、東京都三鷹市にあるカノアクルーのサロンで、乳がん治療後の身体と暮らしをテーマにしたメディア勉強会が開催されました。
メディア勉強会の後半では、実際の商品を見て、触れながら、乳がん治療後の暮らしについて考えました。
紹介されたのは、カノアクルーの装着式人工乳房「ルアナブレスト®」とキャンプの no-bu(ノーブ)のブラレスウェアです。乳房の形や左右のバランス、下着が傷に当たる痛み、服選び、温泉や旅行への不安。そうした一人ひとりの困りごとに、二つの商品はどのように寄り添っているのでしょうか。

テーブル中央の装着式人工乳房「ルアナブレスト®」

(左から)ブラレスウェア「no-bu」、装着式人工乳房「ルアナブレスト®」
肌になじむカノアクルーのルアナブレスト
カノアクルーが提供する「ルアナブレスト®」は、乳房を摘出した方が肌に直接装着するシリコン製の装着式人工乳房です。三鷹市の専用サロンでカウンセリングと試着を行い、残っている側の乳房や本人の肌の色に合わせて仕上げます。職人が一つずつ製作し、血管や乳輪を含めて着色するため、肌になじむ自然な見た目が特徴です。

普段は接着剤を使わずに装着でき、いつも使用しているブラジャーに合わせられます。入浴時には専用の装着剤を使うことで、温泉などでも使用できます。勉強会で実物を手にすると重みがありましたが、身体に装着した参加者からは、手で持ったときほど重さを感じないという感想が聞かれました。
秋沢さんは装着式人工乳房を使い始めたことで、娘と一緒に温泉へ行けた方や、80代になってから自分らしい装いを楽しむために購入した方の事例を紹介しました。必要とする理由も、使い始める時期も人によって異なります。装着式人工乳房は失った部分を補う道具であると同時に、外出や旅行へ踏み出す気持ちを支える選択肢にもなっています。

様々な形の装着式人工乳房「ルアナブレスト®」
乳がん経験者の声が届いたno-buのブラレスウェア
株式会社キャンプの「no-bu」は、ブラジャーを着けずに1枚で外出できるブラレスウェアです。
胸の下や背中を締め付けるゴムやワイヤーを使わず、胸元が透けにくい構造を備えています。もともとは乳がん術後専用の商品ではなく、締め付けや蒸れを負担に感じる女性へ向けて開発されました。
販売後、乳がん経験者から「術後に助かった」「通院時に着ている」といった声が寄せられました。傷口にブラジャーが当たることがつらい時期や、前開きの術後用ブラジャーでも着脱が負担になる場面で、ブラジャーを着けずに過ごせる服が役立っていたのです。利用者の声をきっかけに、キャンプは乳がん治療後の衣服に関する困りごとへ目を向けるようになりました。
代表の榊原美歩さんは、母親の乳がん治療に約7年間寄り添った経験を持ちます。それでも、商品を通じて乳がん経験者と出会うなかで、家族としてそばにいても知らなかった困りごとが数多くあることに気づいたと話しました。
榊原さんは今回の勉強会を開催した背景や、当日感じたことを自身のnoteでも紹介しています。
▶ [乳がん治療後の「身体と暮らし」を考える。メディア向け勉強会を開催しました(榊原美歩さんのnote)]

(左から)秋沢さん(株式会社カノアクルー取締役)、榊原さん(株式会社キャンプ社長)
その日の自分に合うものを選ぶ
乳房を摘出したあとの選択肢には、乳房再建、装着式人工乳房、補整パッドなどがあります。さらに、下着を使う日、ブラレスウェアを選ぶ日など、体調や外出先に応じた使い分けも考えられます。
勉強会で繰り返し語られたのは、一つの商品をすべての人の正解にしないという考え方でした。身体の状態や傷の位置、生活習慣、大切にしたいことは人それぞれです。体調や予定に合わせて、その日の自分に合うものを選ぶ。選択肢を知ることは、そんな過ごし方にもつながります。
選びやすくするために残る課題
選択肢を知っても、利用できるとは限りません。勉強会では、アピアランスケア用品の購入費を支援する制度について、自治体ごとに対象品や助成額が異なることが話題になりました。制度の名称が「乳房補整具」などとなっている場合、装着式人工乳房が対象に含まれるのか分かりにくいこともあります。
供給体制も課題です。ルアナブレストの仕上げには、シリコンの製作や肌色の着色を担う職人の技術が必要です。現在は製作できる人と場所が限られているため、全国各地から三鷹のサロンを訪れる人がいます。カノアクルーでは、美術を学んだ人やネイリストなど、色の知識を持つ人材を育成し、着色工程を担える体制を広げる構想も検討しています。
デザインから広がるアピアランスケア

成果展「care wear」 の学生デザインによるキービジュアル |画像提供:多摩美術大学
2026年、カノアクルーは、東京都の「多摩イノベーションエコシステム促進事業」によるマッチング支援のもと、多摩美術大学統合デザイン学科のPBL(Project Based Learning)授業「肌再現とアピアランスケア研究」に協力企業として参画しました。
本授業では、アピアランスケアを元の状態へ戻す補完にとどまらず、本人が望む姿を表現する「身体拡張」と捉え直しています。学生たちは当事者へのリサーチを重ねるなど主体的に研究を重ね、教員の指導のもとデザイン提案を行いました。
特定の人だけが使う特別な製品として捉えるのではなく、誰もが使いたくなるデザインにすることで、結果として必要な人へも届きやすくする考え方です。授業終了後には、同社が開催した勉強会においても、多摩美術大学の学生による先進的な取り組み成果が紹介されました。

成果展「care wear」の様子。教員や来場者を交え、学生による研究成果の発表や意見交換が行われた(多摩美術大学 上野毛キャンパス)|画像提供:多摩美術大学
アピアランスケアをもっと身近な言葉に
装着式人工乳房やブラレスウェアは、治療そのものを行う製品ではありません。しかし、外出する、仕事へ戻る、家族と入浴する、好きな服を着るといった日常を支える役割があります。治療後の生活が長く続くからこそ、こうした選択肢も医療情報と同じように、必要な時期に届くことが求められます。
今回の勉強会では、当事者、企業がそれぞれの立場から情報を持ち寄りました。選択肢を増やすだけでなく、その存在を伝え、安心して相談できる場所へつなぐこと。それが、治療後の「選べる」を広げるための次の課題です。
アピアランスケアには、一つの決まった正解があるわけではありません。それでも、具体的な商品を知っておくことは、自分に合う方法を考える入口になります。
乳房の見た目や重さ、入浴時の不安に寄り添うカノアクルーの「ルアナブレスト®」。
下着の締め付けを減らし、服として日常を支えるno-buのブラレスウェア。「アピアランスケア」という言葉に出会ったとき、この二つの商品を思い浮かべることから、治療後の暮らしについて考えてみてもよいのかもしれません。
会社概要
■株式会社カノアクルー
所在地 : 東京都三鷹市
取締役:秋沢 京子
設立:2019年12月
事業内容 :ヘルスケア事業(装着式人工乳房・装着剤の販売)
スポーツ、健康、ボランティア活動に関わるコンサルタント事業
講演会・イベント開催事業
公式サイト:https://kanoacrew.co.jp/
お問い合わせ:0120-907-657
■株式会社キャンプ
所在地 : 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-12-16 益本ビル2F
代表取締役:榊原 美歩
設立 : 2023年8月
事業内容 : 商品企画・販売、イベント・ワークショップ企画・運営
no-bu公式サイト:https://no-bu.shop/
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